大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26(れ)753 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人清瀬一郎の上告趣意第一、二点について。

原審弁護人山口龍作が原審において、論旨摘録のような弁論をしたこと及び被告

人が裁判長の訊問に対し論旨摘録のように答えていることは記録上明らかである。

しかしながら、原審公判調書によれば同弁護人の右弁論の趣旨は、被告人の司法警

察官に対する自白について、その到底信用し得ないものであることを主張する事由

として、若しくは、被告人の本件犯行に関する犯情の一つとして、所論のごとき主

張をしたものであつて、旧刑訴三六〇条二項にいわゆる刑の減軽の原由として被告

人が犯行当時心神耗弱者であつたとの事実上の主張をしたものでないことは明瞭で

ある。しかして、かかる弁論の趣旨は右弁護人の弁護自体から十分観取せられるの

であるから、特に所論のような釈明の要のないことは勿論である。又被告人の裁判

長に対する前示答弁が右のごとき事実上の主張にあたらないことは調書上、まこと

に明らかである。よつて論旨はいずれも採用し難い。

同第三点について。

記録について調べて見るに、所論被告人の警察における自白は、取調開始後、一

時間四〇分位でなされたものであり、その間の取調に暴行等の事実のなかつたこと

は被告人の認めるところであり、その他強要、誘導等、特にその供述の任意性を疑

わしめるような事跡を認めることはできない。又、被告人が相当強度の神経衰弱に

かかつていたことは、鑑定人Aの鑑定によつて明らかではあるが、この鑑定書によ

つても、事理の弁別能力並びに事理の弁別に従つて行為をする能力には障碍のなか

つたことがうかがわれるのであり、これを要するに、当時の被告人の精神状態並び

に自白に至る経過に鑑みても、所論被告人の自白が強制、拷問等による任意性を欠

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くものとはみとめることはできない。従つて、所論憲法違反の主張は、その前提を

欠くものであつて、これを採用することはできない。

弁護人澤邊金三郎の上告趣意第一点第二点について。

所論被告人の自白が所論のように強要にもとずくものと認められないことは、既

に前点について説明した通りであるから、論旨は採用することはできない。

同第三点について。

原判決が証拠とした鑑定人Bの原審公判における供述と所論引用にかかる「然し

場合に依りましては、わずかな刺戟でも頓死する人があります」との供述部分とは、

不可分一体を為すものとはみられない、おのおの独立した判断を示す供述とみとめ

るのを相当とするのであるから原判決が、前段供述を証拠としその後の部分を引用

しなかつたからといつて、所論のような違法ありとすることはできない。

又、原判示実況見分書が、数回に亘る見分について、一度に作成せられたもので

あるとしても、所論のように全面的にその証拠価値を否定すべきものではなく、要

は、右書類に関する原審の証拠価値判断の問題でありもとより原審の専権に属する

ところである論旨はいずれも理由がない。

同第四点及び第五点について。

原判決挙示の証拠によれば、原判示の事実を認定することができるのであつてこ

の間、所論のような採証上の違法は認められない。論旨は、畢竟、原審の自由裁量

に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰するものであつて、これを採

用することはできない。

よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従つて主文のとおり判決する。

右は、全裁判官一致の意見である。

検察官 竹内壽平関与

昭和二六年六月二九日

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最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

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